禁煙14日目。二週間目の効果と、煙草会社のご意見。
禁煙14日目。2週間目。
僕は決戦に臨んで、ようやくこの丘に旗を立てた。
振り返ってみれば、僕が歩いてきた場所に、骸(むくろ)がえんえんとにつづいている。JTの刺客の骸だ。さんざん倒してきたからね。決戦なんだ、仕方がない。
僕は決戦に臨むまで、1日10本の煙草を吸ってた。
ここまでくるのに140本の煙草を吸わなかったことになる。
でも「吸いたい」と思った衝動は140回では収まらない。決戦当初の3日間はそれこそ蜂の大群のようになってJTの刺客が襲いかかってきた。それをボロボロになりながら、ようやく斬り抜けた。圧倒的な力でねじ伏せようとするウォリアータイプ、呪文を唱えて僕を混乱させるウィザードタイプ、こっそりと近づいて気づかないうちに仕留めようとするアサシンタイプ。それぞれ特徴のある刺客たちを相手にし、死にものぐるいで斬り合って、どうにかようやくここまできた。
僕の来た道には刺客たちの骸が積み上がっている。
そうして手に入れたものはなんだろう?
つまり、禁煙を2週間したその効果はいかほどのものだろう?
これはね、すごいよやっぱり。
そもそも僕の目的は、煙草をやめることによって「時間を作る」ことだった。
健康になりたいとか体臭を押さえたいとかは、あまり考えていなかったし、過去の禁煙経験(最長3ヶ月)もし健康を目的としていたところでその成果を「うわー、ちょー健康になれたわ−!」と自覚できるには長い時間がかかることを知っていた。
だから「健康」を目的にすることはやめてた。
「健康」を目的にしてしまうと、成果が出るまで長くなる。
そして、そんなに早く成果を実感できるわけがないのに、「まだ成果が出ない」と毎日不満に思っているようでは、この決戦は戦い抜けない。だいたい何年煙草を吸ってたと思ってるんだ。たかだか数日煙草をやめたくらいで、体に超回復を求めるのは自分勝手すぎるってもんだ。健康はあくまで、今後あとからついてくるオマケだ。
僕の第一の目的は「時間を作る」ことだった。
そして、2週間経った。
その成果はきちんと出てる。
実際に「1日100分」煙草にあてていた時間が、そっくりとなくなったわけだ。
もちろん初めの3日間はJTの刺客と死にものぐるいで斬り合ってたから、つまり禁断症状と闘っていたから、100分の時間はすべてその死闘にあてていた。「時間が増えた」という実感はなかった。
でも、一週間を過ぎたあたりから、JTの刺客の攻勢が弱まった。
そうすると、戦いに割く時間も減ってくる。
つまり、当初期待していたような「自由な時間」が増えてくる。
決戦に臨むときに、煙草をやめることで得られた100分の時間をどのように使うか、僕はあらかじめ考えていた。それをすこしずつ実践してみた。
日中、煙草をすっていた10分の細切れの時間には、スマホでマンガを読むようになった。それまでは、気になっていたマンガを読む時間も僕にはなかった。でも煙草をやめて、ようやく「キングダム」を読みはじめた。やっぱり、べらぼうに面白い。
夕方は30分、ウォーキングすることからはじめた。一昨日からは、それをジョギングに変えた。毎日、運動で汗をかくようになった。そんなこと、学生時代以来経験したことのないことだった。
これらは、煙草をやめた時間でやってることだ。
事実として、僕は煙草をやめたことで時間が増えた。その時間で、いままでやりたくてもできなかったことができてる。
しかも、なんだけど。
さっきは自分で「健康はオマケ」だと言ってたくせに、たかが二週間で体調の変化もしっかりと感じる。いやね、正直なところ、以前の禁煙時にもうっすらと「すこしずつ健康になってる!」という体感はあったんだ。
でも今回は体感だけじゃない。
僕はいま、活動量計を身につけて生活してる。
活動量計の睡眠深度データからみても、僕の眠りの質がすこしずつ向上しているのは明らかだ。目覚めが爽快だと思うのは、気のせいじゃなかった。
これは脱ニコチンの成果 + ウォーキングの成果もあるかもしれない。いずれにせよ「煙草をやめた」ことで得られた結果には違いない。
煙草をやめて、ほんとうによかった。
この決戦、途中で負けるわけにはいかない。
さて、今日は決戦2週間目だから、ちょっと長く書くよ。
僕は煙草会社のことをものすごく悪く言う。
こんなに依存性のつよい、やめるのに激しい禁断症状と戦わなければならない薬物を売っ金を稼いでるんだ。悪く言って当然だと思う。
けれど、煙草会社だって言い分はあるはずだ。
そこで公平を期するために、僕は煙草会社の言い分もきちんときこうと思う。彼らはこの薬物の依存性について、なんて言ってるんだろう?
というわけで、世界最大の煙草会社フィリップモリスのwebサイトを見てみよう。
喫煙と健康
喫煙は、心血管疾患 (心臓病)、肺がん、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫や慢性気管支炎)など、数多くの深刻な疾病を引き起こします。 喫煙者がこれらの疾病のいずれかにかかる可能性は、非喫煙者に比べてはるかに高くなります。 また喫煙には依存性があり、やめることは極めて困難な場合があります。 これが、世界中の主要な医療機関および科学機関の見解です。 また、これらはフィリップ モリス インターナショナル(PMI)の見解でもあります。
心血管疾患(心臓病)
- 世界保健機関 (WHO)はそのウェブサイト上で、「たばこの使用は心血管疾患の重大な危険因子であり、 喫煙人口が減れば心臓発作と脳卒中が減るであろう」と述べています。
- 米国心臓協会 はそのウェブサイト上で、「喫煙は血圧を上昇させ、運動に対する耐久力を低下させ、また、血液凝固傾向の高まりを招く」と述べています。
- 英国心臓病支援基金 はそのウェブサイト上で、「紙巻たばこの煙に含まれる一酸化炭素は、血液が心臓および身体に運ぶ酸素量を減少させる」と述べています。
肺がんおよびその他のがん
- WHO はそのウェブサイト上で、「たばこを吸うことで肺がんになるリスクが増大するという事実は、最もよく知られた人体へのたばこの悪影響の一つである。 しかし、喫煙者、非喫煙者ともに、あまり知られていないかもしれないのが、たばこの使用は肺ばかりでなく身体のさまざまな部位にがんができるリスクを増大するということである」と述べています。
- WHO はまた、「喫煙者が肺がんにかかるリスクは、平均で5倍から10倍に増える」と述べています。
慢性閉塞性肺疾患(肺気腫や慢性気管支炎)
けっこう意外だ。
彼らは、かなり率直に、煙草の危険性を認めてる。
というか、なにも隠してない。その点は素晴らしいと思う。
そしてこのページは、トップページから1クリックでたどり着く場所にある。彼らは煙草の危険性を隠蔽しようとは、つゆほども思ってない。
でもそれだけに、確信犯としてのプライドを感じる。
とくに冒頭序文の結句には、貫禄というか、威風堂々とした迫力がある。
また喫煙には依存性があり、やめることは極めて困難な場合があります。 これが、世界中の主要な医療機関および科学機関の見解です。 また、これらはフィリップ モリス インターナショナル(PMI)の見解でもあります。
「私たちは逃げも隠れもしない。煙草には依存性がある。そしてその中毒性は極めて高い。依存から脱するのは決して簡単なことではないだろう。ただ、それでも煙草を吸うのなら、後はあなたの責任だ」
そう言われている気分になる。もっと言えば、
「それでも、あなたは煙草を買うんだろう?」
と見下ろされている気さえする。
こういうのを知ると、なぜ煙草が合法なのか、ということを僕は考えてしまう。世界中の医療・科学機関が危険を訴えていて、売り手も危険を警告している商品だ。ほんとうなら、もっと強烈に取り締まられてもおかしくないんじゃないだろうか?
それなのに、どうして。