禁煙3日目。刺客が唱える呪文。
吸いたい気持ちがピーク。
地面から突き上げられるような、逃げ場のない衝動。
すごいぜ、JTの刺客。
喫煙衝動、そのひとつひとつが、まるで強力な攻撃魔法みたいだ。あるいは壮絶な召喚獣みたいだ。
頭痛がひどい。
地面が波うつ。
すべての音が遠い。
世界がぼんやりと見える。
禁煙3日目、なんども経験したことがあるこのピーク。
でも負けねーぞ。
でもこれさえ乗り切れば、喫煙衝動自体にはひとつけりがつくのを僕は知ってる。
いや、
だからこそ、JTの刺客はいっせいに僕に攻めてくる。この波状攻撃で、相手も決着をつけたいんだ。これに乗り切られてしまえば、あとは俄然、攻めにくくなるから。
こんなにも依存度の高い劇薬物であることを、もっと社会は知っていい。
煙草をもっと厳しい目で見つめていい。
僕らの子供のことを、もっと優しい目でみてあげていい。
そのことは、同じことなんだと、気がついていい。
人類(というのは大げさだけど)は、煙草がここまで健康を害すうえに、依存性が強いものだとは、近年まで知らなかった。でも、僕らはもうすでにその事実を知ったんだ。いいかげん、この依存性の強いドラッグをいまだに合法であることに疑問を抱いていいと思う。
僕は禁煙を大げさに書きすぎだろうか?
でも、僕にとってはそれくらい大きな行為なんだ。
それくらい巨大な試練であって、それくらい本気でやめたいんだ。
あぁ、ちくしょう。JTの刺客が周囲の丘の上から総突撃してくるみたいに感じる。でも負けない。戦う相手は「1本おばけ」でも「吸魔」でもない。実体を持つ相手なんだ。そいつらの思い通りになってたまるか。